磁場を利用した標的指向型薬物・細胞送達技術の開発

   
薬剤学研究室:河野 裕允 准教授
薬剤学研究室
河野 裕允 准教授

2026年度日本薬剤学会奨励賞(2026年6月4日付)
タイトル:磁場を利用した標的指向型薬物・細胞送達技術の開発

抗がん剤は生体内に投与した後、非特異的にあらゆる組織へ分布するため、全身性の副作用が高頻度に出現します。これを回避し、抗がん剤の治療効果を向上させるためには、抗がん剤を腫瘍組織へ選択的に送達する技術の開発が必要となります。そこで私は、酸化鉄磁性ナノ粒子を封入した脂質ナノカプセル(磁性リポソーム)に抗がん剤を搭載し、体外からの磁場付加による磁力により、抗がん剤を腫瘍組織へ能動的に集積させるシステムを構築しました (図1)。本研究で得られた成果に対して、2026年度日本薬剤学会奨励賞 (2026年6月4日付) を受賞いたしました。


図1
図1


磁性リポソームを腫瘍組織へ効率的に集積させるためには、がん細胞表面が負に帯電していることから、リポソーム表面に正電荷を付与することが望ましいとされています。しかし、正電荷を持つ脂質は非常に細胞毒性が高いため、実用化には向きません。そこで、磁性リポソーム自体は安全性の高い負電荷脂質を主成分として作製し、その表面に正電荷を有する生体適合性ポリマーであるアテロコラーゲンを修飾した複合体を開発しました。この複合体は非常に安全性が高く、生体内に投与すると磁場を付加した腫瘍組織へ効率的に集積し、高い抗腫瘍効果を発揮することを明らかにしました。さらに、腫瘍組織へ選択的に遊走する間葉系幹細胞にこの複合体を修飾することで、生きた細胞に抗がん剤を搭載する技術の開発にも成功しました (図2)。抗がん剤を搭載した間葉系幹細胞を生体内に投与したところ、難治性の腫瘍組織へ経時的に集積し、抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました。引き続き、これらの薬物送達技術を利用した新たながん治療法の構築を進めると共に、今後は、炎症性疾患や虚血性疾患などの異なる疾患への応用も目指していきたいと考えています。

図2
図2


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