大学院進学のススメ 大学院への未来の処方箋 Kobe Pharmaceutical University FUTURE'S PRESCRIPTION

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研究を志向する薬剤師の未来処方箋

名誉教授近影 名誉教授近影 神戸薬科大学
学長 北川 裕之

神戸薬科大学 学長 北川 裕之

一体、なぜ私は研究をしようと思ったのか。皆さんは、特別な強い思いをもった人が大学院に進学すると思っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

私は、両親も祖父母も大学教員や研究者ではなく、研究をする職業に就きたいと思っていたわけではありませんでした。
高校に入り、数学や物理が得意だったという理由で理系を選択しました。大学受験の頃には、創薬と建造物の設計に興味を持っていたので薬学部か工学部の建築学科か、願書をポストに投函する直前まで迷って、最終的に薬学部を志願しました。大学で受けた生化学の講義がおもしろく感じられ、生物化学研究室で卒業研究を行った後、大学院に進学しました。博士課程修了後は指導教官の勧めもありアメリカに留学し、大学研究室の先輩であり当時神戸女子薬科大学で教授をされていた先生からお声をかけていただき、現在に至っています。このように色々な方々との出会いによって研究を続ける道を歩んできました。他の選択肢を選ぶことができないため比較はできませんが、自分の裁量でテーマを設定し、誰も知らないことを明らかにしていく仕事をライフワークにできたことは幸運だったと思っています。
私の過ごした昭和から平成の時代とは違い、不確実な時代を生きる皆さんにとっては、確固たる計画もなく大学院に進学し、時間とお金を浪費してしまうことに不安を感じる人も多いでしょう。
そこで、6年制薬学部から大学院に進学するメリットについて考えてみたいと思います。将来、皆さんは薬剤師として働く人が多いと思いますが、患者さんのための医療を真剣に考える人ほど、「このまま薬局の中だけで働いていて、本当に患者のための医療に貢献できているのだろうか」という問題意識に悩まされるのではないかと思います。薬剤師は、薬の専門家と言われながらも、ある意味、中途半端な立場に置かれています。医師と同じように6年間勉強して資格を取得しても、薬を処方することは医師にしかできません。「私はどうして病気になったのか」「なぜ、こんなに辛い治療を続けないといけないのか」という目の前の患者さんからの切実な訴えに、お茶を濁したような答えしか返すことができない自分を不甲斐なく感じるかもしれません。薬の専門家として医師に提言したり、患者さんに寄り添いながらも、専門家の立場から患者さんの体の中で起きていることを伝える能力が必要になってくると思います。こういった能力を磨きたいと思う人は、大学院への進学を検討する価値は十分にあると思います。大学院の間は、研究室で基礎研究をする場合が多いので、薬剤師としての能力向上に繋がらないのではないかと心配になる人もいると思います。しかし、日々の実験で反応溶液の状態、培養している細胞の状態などを観察し、ちょっとした変化に気付くことができるようになれば、将来、患者さんの小さな異変を感じ取ることができると思います。また、大学教員と実験計画について相談し、適宜、結果を報告することができ、その結果について論理的に説明できるようになった人は、医師を含む医療スタッフと対等な関係で話し合うことができるのではないかと思います。
学位とは、時代や国や地域や業種を問わず、就職と給料を決定するほとんどすべての場で考慮されるものです。日常生活を送るには、“博士号”を持っていても足の裏についた米粒ほどの価値しかありませんが、出るところに出ると“博士号”は威力を発揮します。対外的に交渉する際、学位をもっていないと相手にされないこともあります。それは、専門分野の教育、研究を行うにあたり、博士号は知識と能力の高さを示す基準とされているからです。これからの時代、定年が延長または廃止され、働く年数が長期化することが予想されます。若い頃の4年間、大学院で知識と能力を磨いてから社会に出ることを選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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一体、なぜ私は研究をしようと思ったのか。皆さんは、特別な強い思いをもった人が大学院に進学すると思っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
私は、両親も祖父母も大学教員や研究者ではなく、研究をする職業に就きたいと思っていたわけではありませんでした。
高校に入り、数学や物理が得意だったという理由で理系を選択しました。大学受験の頃には、創薬と建造物の設計に興味を持っていたので薬学部か工学部の建築学科か、願書をポストに投函する直前まで迷って、最終的に薬学部を志願しました。大学で受けた生化学の講義がおもしろく感じられ、生物化学研究室で卒業研究を行った後、大学院に進学しました。博士課程修了後は指導教官の勧めもありアメリカに留学し、大学研究室の先輩であり当時神戸女子薬科大学で教授をされていた先生からお声をかけていただき、現在に至っています。このように色々な方々との出会いによって研究を続ける道を歩んできました。他の選択肢を選ぶことができないため比較はできませんが、自分の裁量でテーマを設定し、誰も知らないことを明らかにしていく仕事をライフワークにできたことは幸運だったと思っています。

私の過ごした昭和から平成の時代とは違い、不確実な時代を生きる皆さんにとっては、確固たる計画もなく大学院に進学し、時間とお金を浪費してしまうことに不安を感じる人も多いでしょう。
そこで、6年制薬学部から大学院に進学するメリットについて考えてみたいと思います。将来、皆さんは薬剤師として働く人が多いと思いますが、患者さんのための医療を真剣に考える人ほど、「このまま薬局の中だけで働いていて、本当に患者のための医療に貢献できているのだろうか」という問題意識に悩まされるのではないかと思います。薬剤師は、薬の専門家と言われながらも、ある意味、中途半端な立場に置かれています。医師と同じように6年間勉強して資格を取得しても、薬を処方することは医師にしかできません。「私はどうして病気になったのか」「なぜ、こんなに辛い治療を続けないといけないのか」という目の前の患者さんからの切実な訴えに、お茶を濁したような答えしか返すことができない自分を不甲斐なく感じるかもしれません。薬の専門家として医師に提言したり、患者さんに寄り添いながらも、専門家の立場から患者さんの体の中で起きていることを伝える能力が必要になってくると思います。こういった能力を磨きたいと思う人は、大学院への進学を検討する価値は十分にあると思います。大学院の間は、研究室で基礎研究をする場合が多いので、薬剤師としての能力向上に繋がらないのではないかと心配になる人もいると思います。しかし、日々の実験で反応溶液の状態、培養している細胞の状態などを観察し、ちょっとした変化に気付くことができるようになれば、将来、患者さんの小さな異変を感じ取ることができると思います。また、大学教員と実験計画について相談し、適宜、結果を報告することができ、その結果について論理的に説明できるようになった人は、医師を含む医療スタッフと対等な関係で話し合うことができるのではないかと思います。
学位とは、時代や国や地域や業種を問わず、就職と給料を決定するほとんどすべての場で考慮されるものです。日常生活を送るには、“博士号”を持っていても足の裏についた米粒ほどの価値しかありませんが、出るところに出ると“博士号”は威力を発揮します。対外的に交渉する際、学位をもっていないと相手にされないこともあります。それは、専門分野の教育、研究を行うにあたり、博士号は知識と能力の高さを示す基準とされているからです。これからの時代、定年が延長または廃止され、働く年数が長期化することが予想されます。若い頃の4年間、大学院で知識と能力を磨いてから社会に出ることを選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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FUTURE’S PRESCRIPTION 社会で活躍する修了生

MESSAGE FROM GRADUATE STUDENTS 大学院生からのメッセージ

SUPPORT SYSTEM 研究を続けるためのファイナンシャルサポート

奨学金制度

01神戸薬科大学大学院奨学生制度(第一種)(給付型)

金額
600,000円(年額)
応募資格等
神戸薬科大学学部卒業生を対象とする。
学業、人物ともに優秀であること。
1年次
入学試験を基準とする。
2〜4年次
総説講演での発表内容を基に採用するかを審議する。
採用期間・募集人員等
採用期間:最短修業年限
採 用 数:3名(入学定員と同じ)
備考
奨学生としての資質を満たしているかを審査するため、毎年願書を提出しなければならない。これまでは、資格を満たせば採用数3名を超えても採用されている。

学内業務の補助的な従事による経済的支援制度

02リサーチ・アシスタント(RA)制度

金額
500,000円(年額)
応募資格等

1. 博士課程に在籍している者で、在籍年数が4年を超えない者。

2. RAの業務が、自己の学業の進展を妨げないと判断される者。

3. ティーチング・アシスタントに応募しない者。

1年次
入学試験を基準とする。
2年次
学会発表1回(博士課程在籍中)。
3年次
報文1報(共著者でよい)かつ学会発表1回(博士課程在籍中)。
4年次
報文2報(共著者でよく、そのうち1報は投稿予定あるいは投稿中であり、修了時までに印刷公表または掲載許可が得られると講座主任が判断した場合も認める)かつ学会発表2回(博士課程在籍中)。
委嘱期間・募集人員等
委嘱期間:
月単位で1年以内
採用人数:
博士課程に在籍する学生数(社会人大学院学生を除く)
備考
RAに採用されるものは、博士課程修了時に学位が取得できる状態にあることをその目安とする。「学位論文の基礎となる報文は、原則として2報以上(そのうち1報以上は欧文の報文)であることを必要とする。」を目安にする。応募資格等に記載の報文は、学位論文の基礎となる報文でなくとも認めるものとする。

03ティーチング・
アシスタント
(TA)制度

金額
1,100円(時給)
応募資格等
リサーチ・アシスタントに応募しない者。
大学が指定する日までに「学部学生実習指導補助申込書(TA用)」を提出した者。
委嘱期間・募集人員等
委嘱期間及び人数の決まりはない。
備考
TAに従事する大学院生は、当該大学院生が所属する講座の教員又はそれに関連する教員が担当する学部学生実習を担当することを原則とする。この場合、実習担当教員に欠員の有無は問わない。

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OTHER SYSTEM その他研究生活のサポート

  • 大学院博士課程における在学期間の特例(早期修了制度)について

    大学院博士課程では、特に優れた研究業績を上げたと認められる大学院生に対して在学期間の特例(早期修了制度)があります。

  • 海外学会発表費用の補助

    大学院博士課程では、原則として年1回大学院生の海外学会発表費用の補助を行っています。

*大学院入試情報