コンドロイチン硫酸AはWnt3a/β-カテニン依存的なp53の発現亢進を介して骨芽細胞分化を抑制する

生化学研究室:小池敏靖
生化学研究室
小池 敏靖助教

Carbohydrate Research JSCR44 Poster Award(2025年10月4日付)
タイトル:Chondroitin sulfate A suppresses osteoblast differentiation via Wnt3a/β-catenin-dependent upregulation of p53
コンドロイチン硫酸AはWnt3a/β-カテニン依存的なp53の発現亢進を介して骨芽細胞分化を抑制する


私たちはこれまで、コンドロイチン硫酸における4位と6位の硫酸化の割合(4S/6S比)が、骨をつくる細胞である骨芽細胞の成熟を調節する重要な要素であることを示してきました。本研究では、4S/6S比が高くなった場合に、骨芽細胞分化にどのような影響が生じるのかを解析しました。その結果、4S/6S比の増加により骨形成に関わる細胞内の情報伝達が変化し、骨芽細胞の分化が抑制されることが示唆されました。この成果により、Carbohydrate Research JSCR44 Poster Award(2025年10月4日付)を受賞しました。


図1
図:コンドロイチン硫酸の硫酸化バランス(4S/6S比)による骨芽細胞分化の制御


コンドロイチン硫酸は、軟骨や骨などに多く含まれる糖鎖の一種で、硫酸基が付加される位置の違いによって性質が変化します。この硫酸化の違いは、細胞表面の受容体などさまざまなタンパク質との相互作用に影響し、細胞の働きを左右することが知られています。そのため、硫酸化のバランスが崩れると、細胞機能の異常や疾患の原因となる可能性があります。これまで私たちは、N-アセチルガラクトサミン残基の6位の硫酸化(6S)によって骨芽細胞分化が促進されることを報告してきましたが、4位硫酸化(4S)の役割については十分に分かっていませんでした。そこで本研究では、4Sを合成する酵素であるコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素(C4ST-1)を細胞内で多く発現させることで、4S/6S比が高い状態を人工的に再現しました。その結果、骨芽細胞分化に関わる遺伝子発現や酵素活性の上昇が抑えられ、分化が抑制されることが確認されました。さらに、Wnt3a、β-catenin、p53といった骨形成に関与する分子の働きが変化しており、4S/6S比の上昇がこれらの情報伝達経路を介して骨芽細胞の成熟に影響を与える可能性が示されました。今後は、硫酸化バランスの乱れと骨疾患との関係をさらに詳しく解析し、骨形成異常の理解や治療法開発につながることが期待されます。


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