コンドロイチン硫酸の硫酸化構造変化による骨硬化症の発症

生化学研究室:小池敏靖
生化学研究室
小池 敏靖

タイトル:Altered sulfation status of chondroitin sulfate is associated with osteosclerotic bone dysplasia
コンドロイチン硫酸の硫酸化構造変化による骨硬化症の発症
受賞名:Carbohydrate Research JSCR42 Poster Award
受賞期日:2023年9月9日

コンドロイチン硫酸は、N-アセチルガラクトサミンとグルクロン酸の二糖が繰り返し結合した直鎖状の糖鎖で、様々なパターンで硫酸化されます。この硫酸化糖鎖は、受容体などのタンパク質と相互作用することから、コンドロイチン硫酸鎖の生合成異常は疾患発症の一因となります。本研究では、致死性の骨硬化症であるRaine(レイン)症候群の原因遺伝子であるFAM20Cが、コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化バランスを制御し、その異常によって骨硬化様症状が生じることを明らかにしました。この成果によりCarbohydrate Research JSCR42 Poster Award (2023年9月9日付) を受賞いたしました。本研究は、鳥取大学農学部の田村純一教授との共同研究となります。


図1
図:FAM20C の変異によりコンドロイチン硫酸の硫酸化バランスに異常が生じ骨が硬化する


これまでに私たちは、FAM20Cのファミリー分子であるFAM20Bが、コンドロイチン硫酸鎖の生合成を制御することを明らかにしていました。今回FAM20Cの機能解析を進めたところ、FAM20CはN-アセチルガラクトサミン残基の4位を硫酸化するコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素(C4ST-1)と相互作用し、酵素活性を増加させることが明らかになりました。さらに興味深いことに、Raine症候群で見られるFAM20C変異型では、その作用が完全に失われていました。コンドロイチン硫酸鎖は、N-アセチルガラクトサミン残基の4位あるいは6位の硫酸化による4S/6S比で、硫酸化状態を評価することができます。そこで、FAM20C変異型をヒトの骨芽細胞様細胞株に導入したところ、4S/6S比が顕著に低下し、骨形成を示す石灰化が亢進しました。さらに、4S/6S比の低下を表現型に持つ遺伝子改変マウスを解析したところ、骨硬化が生じていました。そのため、FAM20Cの変異によるコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化バランスの破綻が、骨硬化症発症の一因であると考えられます。今後は、この成果を骨疾患の治療や予防につなげるとともに、体に広く存在するコンドロイチン硫酸鎖の異常が、骨以外でも疾患発症に関与するかを解明していきたいと考えています。


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