• 2024/08/26
  • KPU Research

【プレスリリース】外傷性脳損傷の急性期における脳浮腫発生メカニズムの解明(薬理学研究室)

神戸薬科大学 薬理学研究室の小山 豊 教授の研究グループは、これまで脳卒中や外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury:TBI)など脳傷害の急性期に頻発し、ヒトを死に至らしめる脳浮腫の発生メカニズムに関する研究を行って来ました。今回、同グループは明治薬科大学 道永 昌太郎 講師らと共にTBI急性期に脳内で増加したエンドセリン(ET)が、グリア細胞であるアストロサイトでのイオン輸送体NKCC1の発現を亢進させること、そして増加したNKCC1が脳浮腫発生の一因であるアストロサイトの水分貯留(膨化)を惹き起こすことを、マウスTBIモデルでの実験により明らかにしました。これまでTBI時の脳浮腫発生のメカニズムは、充分には解明されていませんでしたが、今回明らかとなったメカニズムは、急性脳傷害時においてアストロサイトのET受容体の活性化が、大きな役割を持つことを示すものであります。また現在、脳浮腫に対する有効な薬物治療は、その臨床上での重要性に関わらず確立されていません。そのため本研究結果を更に発展させることで、アストロサイトに発現するET受容体の遮断が、TBI急性期での脳浮腫改善の新たな治療戦略となることが期待されます。

本研究成果は2024年8月21日に神経科学分野の学術誌「GLIA」への掲載に先立ち、オンライン版で公開されました。
KPUnews202404_001.jpg
【研究内容】
「外傷性脳損傷の急性期における脳浮腫発生メカニズムの解明」
~脳浮腫改善薬の新たな標的分子への期待~

詳しい研究内容は、以下のPDFファイルをご覧ください。
「外傷性脳損傷の急性期における脳浮腫発生メカニズムの解明」

【論文情報】
(タイトル)
"Endothelin-1 increases Na+-K+-2Cl- cotransporter-1 expression in cultured astrocytes and in traumatic brain injury model: An involvement of HIF1α activation"

DOI: https://doi.org/10.1002/glia.24609

(雑誌名)
GLIA

関連ニュース