学部時代の研究テーマを続けたい。
大学院から新天地でチャレンジ。
高校時代は化学が得意教科で、特に有機化学が興味のある分野でした。そこで有機化学に関連のある分野を志望し、最終的には「人の役に立つことができそう」という理由で薬学の道に進むことに決めました。
私は学部は違う大学なのですが、学部時代の直属の先生の異動についてくる形で神戸薬科大学大学院を受験しました。元の大学に残るという選択肢もあったのですが、学部時代のテーマを続けたいという思いが強かったので神戸薬科大学を受験しました。最初は環境が変わることに対する不安が大きかったですが、研究室の雰囲気に恵まれ、日々刺激を受けながら研究活動に取り組めています。
国家試験終わりから後期大学院入試まで2週間ほどしか時間がなかったので、先生から頂いた過去問をひたすら和訳し、英語の文構造に慣れることを意識して勉強しました。分野によって固有名詞などは大きく異なるのですが動詞や構文については共通のものが多かったため、有効な勉強法だったと思います。
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研究テーマは近年注目の新分野。
一苦労もあり、受賞に繋がる。
大学院1年生の時に、日本薬学会第145年会学生優秀発表賞 (口頭発表の部)で受賞しました。
受賞タイトルは、『乳酸菌由来細胞外小胞が腸管免疫系に与える影響の解明および経口投与を指向した製剤化に関する研究』です。乳酸菌が分泌している細胞外小胞が腸管免疫系に与える影響について調べ、実用化に向けた経口投与を可能にする製剤化についての研究です。細胞外小胞は細胞が分泌している核酸やタンパク質などを内封している小胞で、内封物質を他の細胞に送達していることが明らかになっています。これまでに私の所属するグループでは乳酸菌由来細胞外小胞(L-EVs)が免疫細胞を活性化することを明らかにしています。そこでL-EVsの免疫活性化能を維持した状態で免疫細胞の約7割が集まる腸管に送達できる製剤化が実現すれば、L-EVsを用いた新たな疾患予防・治療アプローチの開発につながると考え、このテーマに取り組んでいます。
研究を遂行する上で、細胞外小胞は近年注目されるようになってきた分野なので、初めは行き詰った際に参考にできる文献を探すことに苦労しました。今では分野に囚われずに必要な情報を集めることができるようになり、今後この分野に興味を持った人の参考になるような研究がしたいと考えるようになりました。
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修了後は創薬の研究者として
新薬の開発に貢献したい。
L-EVsを単純に腸管に送達するだけでなく、細菌やがん細胞の抗原を搭載することで免疫活性化能を有するL-EVsと抗原の腸管免疫系への同時送達を可能とする抗原一体型経口ワクチン製剤の開発に挑戦したいと考えています。
大学院修了後は大学や企業で核酸やタンパク質などを用いた中分子医薬品の研究に携わりたいと考えています。中分子医薬品は低分子・高分子医薬品では標的とすることができなかった分子に作用させることができるため、未だに治療法が確立していない疾患に対する新薬の開発に貢献することが目標です。