- 近年、医薬品の構造は多様化しており、標的となる化合物の効率的合成法の開発は、資源の有効利用や環境保護の面からも重要な課題です。このような観点から、当研究室では目的とする有機化合物のみを選択的に、また可能な限り環境にやさしい方法で合成するための新しい方法論の開発研究を行っています。
具体的には、連続するヘテロ原子の反応性を利用したドミノ型反応や極性転換反応、閉環反応、およびトリエチルボランやジメチル亜鉛をラジカル開始剤とするラジカル反応を中心に医薬品合成へと適用可能な効率的反応の開発研究を推し進めています。 - 連続転位反応による縮環型ヘテロ環合成法の開発を目指して、アルキニルヒドラジドを基質とし、遷移金属触媒を用いて加熱すると、様々な結合の組み換えが起こり、N-N縮環型ピラゾロンが得られることを見出しました。さらに合成したN-N縮環型ピラゾロンは官能基変換が可能な合成中間体としても機能するため、今後の展開が注目されます。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews202002.pdf
- ヒドラゾンの潜在的な反応性 (イミノ炭素の求核性) に着目し、新たな多置換トリアゾール構築法の開発に成功しました。本手法では、これまで合成が簡単ではなかったアルキル基を有するトリアゾール類が系統的に合成可能になりました。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews202104.pdf
- さらに共役ヒドラゾンを用いれば、共鳴効果によりβ位が求核部位として働くことが期待されます。この反応性を利用して、共役ヒドラゾンの自己縮合反応および異なるヒドラゾンとの交差縮合反応を開発し、新たな多置換ピラゾール合成法を開発しました。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews202005.pdf
- 無水ヨウ化水素の特性に着目し、アリールヒドラジン存在下シクロプロピルアセタールを無水ヨウ化水素と反応させると、転位反応を含む連続反応が進行し、新たな還元的Fischerインドール合成法を開発しました。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews202105.pdf 無水ヨウ化水素を用いた共役ヒドラゾンの反応:Chem. Eur. J. 2016 22 2616-2619
- 金触媒存在下、N-アリルオキシイミンの加熱により生成したN-アリルオキシアゾメチンイリドが連続反応を引き起こし、複雑な架橋型イソキサゾリン構築法を開発しました。この反応では一挙に複数の結合を構築し、非常にユニークな骨格を構築することができます。
- N-アルコキシアミドを求電子剤とした有機アルミニウム試薬によるアミドのα位およびγ位での極性転換反応を開発しました。通常は導入困難な求核種をアミドのα位またはγ位に導入することができる合成法であり、アミド化学の新たな一面を創出することができました。 N-アルコキシエナミンと有機アルミニウム試薬の反応: Org. Biomol. Chem. 2018 16 8940-8943; Tetrahedron Lett. 2016 57 2269-2272; Eur. J. Org. Chem. 2015 3899-3904; Chem. Pharm. Bull. 2014 62 927-932; Angew. Chem. Int. Ed. 2011 50 928-931.
- α位にブロモ基を有するラクタムにGrignard試薬や有機リチウム試薬を反応させると、求核付加-環縮小反応が進行する新たなピロリジン合成法を開発しました。本反応はラクタムのAza-Favorskii型転位とみなすことができ、更なる展開が期待されます。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews202006.pdf
- N-(アシルオキシ)エナミドを共通基質とした転位反応を利用して、異なる2種類の生成物を作り分ける分岐型合成法を開発しました。 <プレスリリース> https://www.kobepharma-u.ac.jp/news/docs/KPUnews201904.pdf エナミドの転位反応-求核付加反応: Synthesis 2016 48 882-892.
