試験管内分子進化による高親和力抗エストラジオールscFvの創製と応用

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生命分析化学研究室
大山 浩之 助教

本研究では、抗体可変部へランダム変異を導入した「ライブラリー」から変異体を探索する"試験管内分子進化"により、抗体分子の「育種」を試みています。エストラジオールを標的とする人工ミニ抗体(scFv)に3段階の変異導入を施すことにより親和力が250倍向上した変異scFvに「進化」させ、免疫測定法の高感度化を達成しました。

この度、「試験管内分子進化による高親和力抗エストラジオールscFvの創製と応用」という題目で平成25年度日本臨床化学会奨励賞(平成25年8月31日付)を拝受いたしました。これは動物が作る天然の抗体に遺伝子操作を加えて抗原に対する親和力が格段に向上した変異体を創製し、より優れた診断試薬として働くことを実証した研究の成果です。

抗体は、特定の標的分子と特異的に結合するため研究ツールとして重用され、近年は医薬品としても注目を浴びています。私が所属する生命分析化学研究室では、さまざまな診断あるいは環境マーカーに対する特異的な抗体を、細胞融合法や遺伝子操作を駆使して作製する、「抗体のバイオテクノロジー」に関する研究を行っています。さらに、得られた抗体を用いて各種の分析法を開発し、その実用性を検討しています。分析試薬として理想的な性能を持つ抗体を、「創る」から「使う」まで同一の研究室で一貫して遂行できるという点で、我が国有数のラボと自負しています。

遺伝子操作による変異抗体作製の基本的な原理が発表されたのは1980年代に遡りますが、臨床現場での使用に耐える変異抗体、特にステロイドやカテコールアミンのような低分子抗原(ハプテン)に対する変異抗体の作製例は極めて少ないのが現状です。私は、婦人科領域の診断指標であるエストラジオール(いわゆる女性ホルモン)をモデルハプテンとして取り上げ、マウスから得た「プロトタイプ抗体」に段階的に変異を導入して天然の抗体を上回る変異抗体を創製し、これを用いて臨床応用が可能な高感度免疫測定法を開発しました。

今後は、コンピューターモデリングを活用する変異導入部位の予測や、目的の変異体を効率よく単離する新しい選択法の開発も試みる予定です。また、ハプテンに限らず、さまざまなバイオマーカーに対する変異抗体の調製にも取り組み、従来の抗体では不可能な優れた免疫測定法の開発にチャレンジしていきます。

平成25年度日本臨床化学会奨励賞
タイトル:「試験管内分子進化による高親和力抗エストラジオールscFvの創製と応用」

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本研究のイメージ図

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