肺高血圧症の病態解明

 全身を巡った血液は右心房に戻った後、右心室から駆出され、肺動脈を通って肺に流れ込みます。この肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇するのが肺高血圧症です。原因が全く不明な特発性肺動脈性肺高血圧症や膠原病、先天性心疾患の合併する肺高血圧症などがあり、いずれも予後が悪く、難治性で難病に指定されています。エンドセリン受容体拮抗薬の登場により、治療戦略は格段に向上しましたが、その治療効果は未だに不十分なままです。それは、なぜ肺動脈の圧が異常に上昇するのか原因がハッキリわからないため、根本的な治療法が開発できないからです。

 私たちは肺高血圧症の病態には肺の血管内皮細胞の傷害・機能異常が最も重要であると考えています。そこでDNAマイクロアレイなどの手法を用いて肺動脈、特に肺の微小血管の内皮細胞に特異的に発現する遺伝子群の探索を行っています。病因の候補遺伝子が明らかとなれば、それら遺伝子の機能解析を進めます。また、ジフテリアトキシン受容体のトランスジェニックマウスや遺伝子欠損マウスを用いて、それら遺伝子を発現する血管内皮細胞だけを特異的に傷害し、肺動脈の血圧の変動を検討します。これら研究により、肺高血圧症の未知の病態を解明し、新しい治療法の開発を目指しています。

肺高血圧症の病態解明