肥満・メタボリック症候群の新しい病態解明

 肥満は日本を含む先進国に留まらず、一部の途上国においても増加の一途を辿っています。世界では約16億人が体重過多であると報告されており、その内4億人は臨床的に問題となる肥満を呈しています。過度の肥満は脂肪組織の機能異常からインスリン抵抗性、糖尿病、高血圧などを来たし、メタボリック症候群と呼ばれる病態を呈します。そして、メタボリック症候群は脳卒中、心血管疾患を発症するリスクを数倍〜10倍程度増大させます。ARIAノックアウトは肥満に抵抗性を示す

 我が国では成人の4分の1以上にメタボの疑いがあると言われており、早急な対応が求められていますが、肥満から脂肪組織の機能異常に至る詳細な分子機構には未だに不明な点が多いのが実情です。

 脂肪組織は最も血管に富んだ組織の一つであり、脂肪組織の血管新生(新しい血管を作ること)と脂肪機能の関連が最近注目されています。

 私たちは血管新生を制御する新規遺伝子を世界に先駆けて発見し、ARIAと名付けて報告しました(PNAS 2009, PNAS 2011)。さらにARIAは脂肪組織の血管に特に多く発現し、脂肪組織の血管新生の制御を介して、肥満・メタボリック症候群の発症・進展に関わる事を見出しました(Nat Commun 2013)。


 これらの結果からARIAの機能阻害は全く新しい血管新生促進薬、あるいは抗肥満・メタボリック症候群治療薬として大変有望と考えられます。現在、ARIA阻害化合物の探索は厚生労働省・文部科学省・経済産業省の連合からなる創薬支援ネットワークに採択され、日本発の新薬開発に向けて研究を進めています。ARIAノックアウトは肥満に抵抗性を示す

 また私たちは成熟脂肪細胞と血管内皮細胞のクロストークに着目し、未知の脂肪機能調節機構の解明を目指した研究を行っています。既に、本クロストークに関わる2つの重要な遺伝子を発見し、分子生物学的手法を駆使して、その機能解析を進めているところです。